ユマニチュード・最新の認知症ケア


ユマニチュード・最新の認知症ケア

ユマニチュードはイヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコットさんと言う2人のフランス人よって創設された認知症ケア技術です。

ユマニチュードのケア技術を簡単に言いますと「認知症患者とコミュニケーションを取り円滑にケアを行う」ことです。

日本のケアは残念ながら患者さんに対し丁寧にお世話をしていますが、コミュニケーションを上手に取っていないためケア拒否や暴力ということが起きてしまっているのです。

ユマニチュードの効果はこの動画「ユマニチュード / 認知症ケア 優しさを伝える技術」を観ていただくと良く理解出来ると思いますので、まずこの動画を観てから以下のユマニチュードの技術を読んで下さい。

ユマニチュード / 認知症ケア 優しさを伝える技術


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ユマニチュードの4つの基本技術

ユマニチュードの技法の内、最も基本的な要素は4つあります。

それは、「見つめる」「話しかける」「触れる」そして「寝たきりにしない」の4つの柱です。

一見すると、「そんな簡単なことでいいのか」「そんなこと、いつもやっているだけど」と思うぐらい、実にシンプルです。

しかし、この一見すると簡単に思えることが、認知症の人の持つ能力、つまり、症状が進むことで何か苦手になり、何か比較的失われることなく、保持し続けられているかということへの正確な理解に基づいているのです。

ユマニチュードには、プロの介護者が身につけるべき、非常に専門性の高い技術も多数ありますが、家族の介護をする人が、ちょっとしたコツを知るだけでも、認知症の人とのコミュニケーションが改善し、苦痛を伴うケアが楽にできるようになったという声を何人もの人から聞きました。

これなら、自分でもできそうだと思えることだけでいいので、気軽にチャレンジしてみることをお勧めします。

1.見つめる

一口に「見つめる」と言っても、様々な「見つめる」があり、それぞれ、認知機能の低下している相手に与えるメッセージが異なるのだと言います。

相手がベッドに寝ていたり、車いすに乗っているからといって、上から下に見下ろすと、相手は「自分か見下されている」あるいは、「支配されている」ような気持ちを感じます。

なるべく同じ高さから水平に見つめることで、自分は対等に接していると伝えます。

これは、「信頼」を伝えるメッセージになります。

横から見ることは、相手に「攻撃的」なメッセージを与えていることになると言います。

また認知機能が低下している人は、情報の入り口が秋狭くなっているためたとえ視界に入っていても、認識できる範囲が狭くなっている場合もあるのです。

横からではなく、正面から、相手の視線を捉え、正面に回っても相手の視線が合わない時は、「目を見て下さい」とお願いしたり、自分の位置を変えるなど、視線をつかみに行くことが大切です。

目を合わせる時間か短いと、相手は「自信のなさ」や「恐れ」を感じる場介があります。

ちらっと見るだけではなく、相手が自分を認識できるぐらい一定の時間、見つめ続けることが必要です。

遠くから見るのは、やはり「見下されている」とか「否定されている」という気持ちを抱かせてしまいます。

ここで大切なのは確実なアイコンタクトを取ること。顔に視線を向けていてもアイコンタクトが意識的に行われていない場合が、案外多いのです。長い時問、アイコンタクトをし続けなければならないわけではありませんが、少なくともO・4秒は必要だと言います。

その時、相手をびっくりさせないことも重要です。いきなり相手の顔の前に現れるのではなく、「私があなたに近づいています」というメッセージを相手が理解できる時間を与えるために驚かさないぐらいの距離を取り、正面から相手にゆっくりと近づき見つめるのです。

しかし、どんなに否定的なメッセージを与えるよりも最悪の状態が、「相手を見ない」ということです。

相手を見ないということは、相手に「あなたは存在していない」と伝える強烈なメッセージで、これは「人間らしい」対応とは対極にあるものです。

人は、恋人や自分の赤ちゃんなど、自分か好ましいと思っている相手と良い関係を結ぼうと思うと、自然に、「ユマニチュードな眼差し」を相手に向けています。

ところが、好ましくない相手に出会うと、ついつい顔を背け、相手を見ないようにしてしまいます。

認知症の人が何かのきっかけで大声を上げたり、攻撃的な言動を示すと、私たちは無意識のうちに視線をそらしてしまいがちです。

攻撃的でケアが困難な人に対して「私はあなたの敵ではない」と笑顔で見つめることは、

自然にできることではなく、学ばなければ実行することができないケアの技術です。それが、認知症の人がその人らしさを取りもどすきっかけになることかあり得るのです。

2.話しかける

大きな声や攻撃的な声のトーン(調子)、そして、否定的だったり、後ろ向きな内容はなるべく避け、優しく、穏やかに、できるだけ前向きな話をするよう心がけます。

認知症の人の診察をしているお医者さんから、「世話をしているご家族は、何か粗相をしてもできるだけ、怒ったり、叱ったりしないようにしていると言っていたのに、本人からは、いつも怒ってばかりいるから辛いと打ち明けられることが少なくない」と聞いたことがあります。

関西の人が、東京で暮らし始めると、会話がつっけんどんで、まるでケンカしているように感じるのだと聞きますが、意識して穏やかに話すようにしないと、認知機能が低下している人にとっては、まるで自分が責められているように感じてしまうのです。

「話しかける」ことで、特に大事なのは、例えば、オムツの交換や着替え、体を拭くなどというケアの目的があったとしても、最初から「オムツの交換に来ました」と用事を申し出るのではなく、「こんにちは、○○です。今日はあなたに会って話をしたくて来ました。ご機嫌はいかがですか?」と、まずは相手との関係性「絆」を築くためのメッセージを伝えるということです。

最初から相手に用事を伝えると、いくら自分の都合のためだと思っていても、相手には「この人は、自分の都合を優先しようとしている」というメッセージを送りつけることになってしまうからです。

そして認知機能が低下している相手には、やや大げさなぐらいの笑顔と優しい声のトーンで、話しかけることが必要です。

いかに優しく、穏やかにといっても、前向きなことばを話し続けるのは、なかなかどうして簡単なことではありません。

特に相手が返事を返してくれたり、相づちを打ってくれなければなおさらです。

言葉でメッセージを送れば、通常は柑手から言語や、言語でなくとも意味のある返答つまり「フィードバック」があるものです。それがなければ、「今日は、いい天気ですね」「顔色がいいようですね」と、天気と顔色をほめたら、後は何を話していいのか、結構、行き詰まります。

そこで、考え出されたのが、「オートフィードバック」というユマ二チュードのコミュニケーション技術です。

コミュニケーションを取るのが難しい相手でも、言葉によるメッセージを送り続けるためのエネルギーを自ら作り出し、補給し続ける方法です。

基本は体を拭くなど何かケアをする必要がある時に、その行為そのものを言葉にするのです。

今日は、○○さんにさっぱりしてもらおうと思って、準備してきました」「とっても暖かくしてあるので、すごく気持ちがいいですよ」「それでは、右手から拭いていってもいいですか」などと、実況中継のように状況を説明していくのです。

併せて、「こんなにしっかり腕が上がるのは、すばらしいですね」「協力してくれたので、うまく拭けました」「OOさんも、すごく気持ちよかったのではないですか」などと、相手を快くさせる前向きの言葉を添え、ケアの空間を暖かい言葉で満たしていくのです。

ある看護師さんは、[人間というのは不思議な生き物で、実際に前向きな言葉を口に出してケアを行うと、それがウソにならないように、どう工夫したら相手が気持ちよく感じるかをかんがえるようになった」と話していました。

このケアの実況中継は、もう1つ、別の役割も果たしています。

認知症が進むと少し前に起きた出来事の記憶を定置させることができないため、短い場合は5秒前に自分が何をやっていたか分からなくなるそうです。

自分か見慣れない場所(病院や介護施設)で、見知らぬ人に裸にされ、体を触られていることに突然、気がつけば、誰でも身を守ろうとして、大きな声を出したり、ケアを拒否するということが起こりえます。

それが、たとえ、顔は分からなくても、優しい声で話しかけてくれる笑顔の相手が、自分を心地よくする手助けをしているのだと説明してくれていたら、安心して身をゆだねることができるようになるのです。

3.触れる

ユマニチュードの3つ目の柱は「触れる」ことです。

触れることも、見つめることや話しかけることと同様、そのやり方次第で、相手にまったく異なるメッセージを伝えることになります。

触れる面は広く、優しく、ゆっくりとなでるようにすることで、相手に喜びや慈愛の気持ち、そして、信頼を感じさせます。

これらは、認知機能の低下した相手との関係性を築くための大事な手段であり、ケアをする時でも可能な限り、どちらかの手が相手に触れているようにすることが理想だと考えられています。

ここで気をつけなくてはならないのは、顔や手は、体の中でも多くの神経が張り巡らされた敏感な場所であり、相手に確認せず、いきなり顔や手に触ると相手をビックリさせ、行動・心理症状のスイッチを押すことになってしまう可能性かおるということです。

まずは、腕や背中など、比較的触れられても抵抗が少ないと思われる場所に触れ、相手に親愛のメッセージを送り、様子を見るのです。

手に触れる時には、手のひらを上にして両手を差し出し、相手が自分から手を乗せてくれるのを待つというのも、ユマニチュードを学んだ優れたインストラクターである看護師さんたちが、現場で行う技術の1つでした。

触れるという行為は、関係性のためだけでなく、オムツを交換したり、相手を誘導するなど、手足や体の位置を移動させる時にも必要になります、

この時に気をつけなければならないのが、「つかむ」という行為です。

私たちは目常の生活の中で、手足をいきなりつかまれるという経験をすることはまずありません。

ところが、オムツを交換したり、相手の体を拭く時には、ごく自然に相手の子首や腕をつかんでしまいます。

認知機能の低下している人に対し、この「つかむ」という行為が伝えるメッセージは、「連行」や「罰」を思い起こさせる極めて否定的なものになりかねません。

「つかむ」のではなく、相手の動こうとする意志を生かして、下から支えるのです。

それでも人間は、何か作業をする時には、つい「つかんでしまう」ものです。

最初のうちは、ケアを行う時に、親指を人差し指にくっつけたまま離さないよう、意識して使わないようにすることが必要なのだと言います。

4.寝たきりにしない

4つの柱の最後は、「寝たきりにしない」ということです。

これには、言葉通りの「立たせる」という意味と、その人が本来持っている能力をケアによって奪わないという両面があると理解しています。

「立つ」ことは、体の健康を維持・改善する上で、極めて重要な役割を果たします。

まず、骨には、力が加わった時にそれを感じ取るセンサーのような働きが備かっています。

体の重さがかかり、骨が圧迫されると、自ら強くしようという仕組みが働き出すのです。

高齢者であれば、無理をしなくとも少しの負荷をかけるだけで効果があると言われています。

また、骨に負荷がかかることで、カルシウムが定着し、骨を強くし、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を防ぐ働きがあります。

「立つ」だけでも骨は鍛えられるし、歩くことでますます効果は高まります。

さらに、骨を支える筋肉の力が増したり、反射神経が強化され、転倒や骨折の防止につながるなどの効果があるのです。

足は第二の心臓と言われており、「立つ」ことは血液の循環にも大切です、

人間は立って歩くことで、足の筋肉が静脈をマッサージして、心臓から送り出された血液を足から心臓までもどすポンフの機能を持っています。

寝たきりの状態が続くと足のポンプ機能が働かないため、血流が遅くなり血が固まりやすくなるなど、健康上のリスクが高まるのです。

もちろん「立つ」ことが、生きる自信と誇りを保ち、尊厳を守ることで大きな意味を持っていることも忘れることはできません。

ただ、長い間、寝たきりの状態に置かれていた人を、無理に立たせて、万一転倒や骨折させるような事態が起きることは、避けなければなりません。

ユマニチュードの技術を用いて、病院や介護施設の利用者を「立たせる」時は、担当医師と綿密な打ち合わせを行い、立ったり、歩いたりする身体的な機能がきちんと保たれているか、また、本人に立ちたい、歩きたいという意志があるかを慎重に確認して取り組みが行われています。

リスクの伴う「立つ」ケアを、個人の判断で行わないよう十分に注意して下さい。


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東京医療セインター 本田美和子医師

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