釣藤散(ちょうとうさん)


釣藤散(ちょうとうさん)

釣藤散(ちょうとうさん)の効能

体力中等度以下で、慢性頭痛にともない、高血圧、のぼせ、肩こり、めまい、耳鳴りがある人に用います。動脈硬化、高血圧などに応用します。


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釣藤散(ちょうとうさん)の解説

高血圧や脳血管障害にともなう頭痛に処方

中年以降の人の慢性的な頭痛に効果があるとされる漢方薬で、高血や慢性期の脳血管障害(脳梗塞などの後遺症)にともなう頭痛にもよく用いられます。

特に、朝方に起こる頭痛・頭重感によいとされています。

頭痛にともなう、めまい、肩こり、うなじのこり、のぼせ、不安焦燥感、睡眠障害などの症状もあわせて改善します。

西洋医学的には、釣藤散に末梢の血流(微小循環)を改善する作用のあることがわかっており、近年の臨床研究でも、緊張型頭痛や脳血管障害の慢性期の頭痛、それにともなう症状に対する効果が確かめられています。

認知症の周辺症状に効果がある漢方薬

近年、釣藤散は脳血管障害の後遺症として起こる血管性認知症の周辺症状の改善に使われて、その効果が注目を集めています。

血管性認知症の人に釣藤散をのんでもらい、その効果を調べた研究では、会話の自発性の低下や表情の乏しさ、幻覚、妄想、夜間せん妄、睡眠障害などの改善がみられました。

これらは、漢方で「気虚」や「肝」の失調ととらえる症状とも一致します。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

釣藤鈎(ちょうとうこう)

釣藤鈎には頭痛、めまいを伴う高血圧に対する血圧降下作用、鎮静効果、鎮痙効果などがあります。

血圧降下作用は、実験的にも臨床的にも証明されていますが、これは血圧降下薬のレセルピンと同じアルカロイドのヒルスチンなどによるものです。

また鎮静効果、鎮痙効果は有効成分のリンコフィリン、コリノキセインなどによるもので、これらの成分には睡眠延長作用が認められています。

さらに動物実験で、空間認知障害の改善効果が認められていることから、記憶障害に対する効果も期待されています。最近、老人性痴呆症に釣藤鈎を配合した釣藤散が、有効との臨床報告がなされています。

陳皮(ちんぴ)

陳皮はミカンの皮を、天日乾燥させた物です。リモネン、テルピネオールといった芳香性のある精油成分を豊富に含んでいるため、胃液分泌促進作用、胃運動亢進作用や抗炎症、抗アレルギー作用があります。漢方では、芳香性健胃薬や駆風(腸管にたまったガスを排出)、食欲増進、吐き気止めなどを目標に処方されます。

また、精油成分には一般に発汗作用があり、初期の風邪などに効果があります。入浴剤として利用すると血行をよくし、肌を滑らかにします。

半夏(はんげ)

半夏には水分の停滞や代謝障害の改善作用や、鎮吐効果(吐き気止め)があります。特に胸腹部に突き上げるような膨満感があり、お腹がゴロゴロなる場合やのどの痛みがある場合に用います。

しかし、えぐみが強く、飲みにくくてかえって吐き気を催すこともあるので、単独で利用されることはまれで、漢方では吐き気をともなう胃腸障害や、つわりの適用処方などに広く配合される重要生薬の一つです。

鎮吐作用は、有効成分のアラビナンを主体とする多糖体成分によると考えられています。

麦門冬(ばくもんどう)

麦門冬には鎮咳・抗炎症、抗腫瘍効果が認められています。これらの作用は主成分のステロイドサポニン、オフィオポゴニンによるものです。また、オフィオポゴニンDはIgM抗体の産生を抑制しますので、抗アレルギー作用を有しています。

漢方では、麦門冬は鎮咳去痰薬として処方されます。

茯苓(ぶくりょう)

茯苓には、利尿、強心、鎮痛、鎮静作用があります。漢方処方では利尿剤、利水剤、心悸亢進、胃内停水、浮腫、筋肉の痙攣などに茯苓を配合しています。

秩苓とは漢名で、植物名をマツホドと呼び、松の根に寄生するサルノコシカケ科の菌核です。秩苓は菌核に多糖類のβパヒマンを、それにテルペノイドやエルゴステロールなどの成分を含んでいます。

最近の報告では多糖類のパヒマンから誘導されたパヒマランに、細胞性免疫賦活作用が認められています。サルノコシカケ科に共通の抗腫瘍作用とともに、今後の研究が期待されています。

茯苓は民間薬としては使われず、まれに利尿を目的に煎液を飲む程度です。漢方でも配合薬としては汎用されますが、単独では用いません。

人参(にんじん)

漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。

この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。

その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。

防風(ぼうふう)

防風には、発汗、解熱、鎮痛、鎮痙作用があります。 漢方薬で、皮膚疾患薬、消炎俳膿薬、鎮痛薬とみなされる処方に配合され、発汗、解熱、鎮痙などを目標に、感冒による関節痛や頭痛などに使用します。

有効成分は、クマリンやクロモン誘導体、サポシニコバンA~Cなどです。

クマリンには抗ヒスタミン作用やカルシウム拮抗作用、血液凝集抑制作用、発がん抑制作用があり、防風エキスでは、ラットの実験で関節炎を抑制する作用が確認されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

生姜(しょうきょう)

生姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。

石膏(せっこう)

石膏には、解熱作用 消炎作用 止渇作用 鎮静、鎮痙作用、抗アレルギー作用、収斂作用(組織を引き締め作用)があります。漢方では、利尿、激しい喉の渇き、体全体の熱さましを目標に処方されます。

成分は、主に含水硫酸カルシウム、微量に二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄があります。


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漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


うつ病に処方される漢方薬

脳卒中(脳血管障害)に処方される漢方薬

不眠症に処方される漢方薬

物忘れ認知症に処方される漢方薬


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