画像診断装置PETによる脳疾患の早期発見(アルツハイマー病 パーキンソン病)


画像診断装置PETによる脳疾患の早期発見
(アルツハイマー病 パーキンソン病)

PTEによるアルツハイマー病の診断

高齢化とともに増加するアルツハイマー病やパーキンソン病などの早期発見に、画像診断装置PET(陽電子放射断層撮影)が有効であることが分かってきました。元々、脳機能を観察するために開発された装置で、実際の診療で脳の検査に使う医療機関もあります。

脳は体内で最もブドウ糖を消費する器官です。アルツハイマー病は脳の神経細胞が委縮して、記憶障害が起きる認知症の一種で、委縮した部分の活動が鈍り、ブドウ糖の消費が減ります。PETによる診断は、このブドウ糖の取り込みを調べます。

PET画像では、脳活動の活発な部分が赤色に、逆に活動の低下した部分は青色で表示されます。アルツハイマー病の人の脳は健常な人に比べ、耳側の頭頂部付近の活動が低下していますので、アルツハイマー病の方の画像は青く染まります。

PET診断の特長は、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像)ではとらえにくい早期のアルツハイマー病を把握できる点です。

全国でも数少ない頭部専用のPETを持つ県西部浜松医療センターでは、過去2年間にアルツハイマー病が疑われる患者約60人を検査して、8割をアルツハイマー病と診断しました。

同センター医長の尾内康臣さん(先端医療技術センター)は「MRI、CTは脳の様子を写真のように映すのは得意だが、外形的な変化が出ていない早期のアルツハイマー病の診断は苦手です。その点、PETは形状変化が表れる前の脳機能の変化を読みとれます」と説明します。

ただ、アルツハイマー病と診断されても、打てる手は多くありません。進行を半年ほど遅らせる抗認知症薬があるほかには、リハビリが試みられている段階です。それでも早期診断できれば、家族らが病気に配慮した適切な接し方ができるうえ、本人にも日常や社会生活での留意点をアドバイスできます。


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PTEによるパーキンソン病の診断

手足の震えなどの症状が表れるパーキンソン病の早期診断にも、PETは活用され始めています。

この病気は、脳の神経細胞が変性し、神経伝達物質のドーパミンが減少することで起きます。検査にはブドウ糖の代わりに「CFT」という薬剤を使います。この薬剤は、ドーパミンを作り出す神経細胞に付着するため、薬の集まり具合を見れば、病気の初期でも活動低下の様子が確認できます。

同センターでは、過去1年間に約20人が、この検査でパーキンソン病と診断されました。手足の震えなどの症状が出る前から発症を“予測”することも可能です。ただ、薬剤が特殊なため、検査できる施設は全国でも少ないです。

PETによる脳検査を実施している東京都老人総合研究所付属診療所長の石井賢二さんは「診断で、アルツハイマー病やパーキンソン病の進行を遅らせることが期待できます。治療法の向上によって、普及が進むはず」と語っています。

現状では保険は適用されず、約10~40万円の診断料は全額自己負担か、医療機関が研究費で負担しています。

画像から病状を読みとる技術を備えた医師がまだ少なく、医師の養成も課題になっています。


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関係医療機関

県西部浜松医療センター

東京都老人総合研究所付属診療所


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