脳脊髄液減少症の最新治療「ブラッドパッチ治療(自家血硬膜外注入)」


脳脊髄液減少症の最新治療「ブラッドパッチ治療(自家血硬膜外注入)」

脳脊髄液減少症

脳脊髄液減少症は、体を起こすと表れる頭痛(起立性頭痛)に加え、吐き気、嘔吐、首の硬直、めまい、視力低下、耳鳴りなど様々な症状が表れます。

脳脊髄液の役割は十分解明されていませんが、脳・脊髄の保護や、栄養補給などの役目があると考えられています。

液を閉じ込めている硬膜の小さな穴から液が外に漏れて減り、水位が低下すると、液の中に浮かぶ脳の位置が下がり、脳から出る神経が引っ張られるなどして影響を受け、症状が表れると考えられています。

脳脊髄液の減少で、様々な症状が表れることは以前から知られていましたが、脳神経外科などの専門医の間では「交通事故などの外傷で硬膜に穴が開くことは考えにくい」との考えが一般的でした。

そのため、患者さんは「心の病」と決めつけられたり、「事故の補償目当てでうそをついているのでは」などと思われたりして、苦しんできました。

そこで厚生労働省は、専門医らによる研究事業「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する研究」を2007年に開始しました。

起立性頭痛の症例を100例集め、発症の経緯や検査画像を詳細に検討しました。その結果、外傷をきっかけに脳脊髄液の漏れが起こったケースを5例確認しました。

2011年6月、「交通事故などの外傷が契機になることは、決してまれではない」との判断を明らかにしました。

山王病院脳神経外科副部長の高橋浩一さんは「外傷で脳脊髄液減少症になると国が認めた画期的な報告です。患者の切実な訴えが、やっと国に届いきました」と喜んでいます。

これにより、交通事故の自賠責保険や労災の認定でも、この病気が事故の後遺障害と判断され、患者は正当な補償を受けやすくなると期待されています。


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ブラッドパッチ治療(自家血硬膜外注入)

脳脊髄液の漏れを確認するには、微量の放射線を放つ薬品を腰から入れ、特殊な画像装置で変化を観察する検査(脳槽シンチレーション)などを行います。

治療は、事前に採取した患者本人の血液を少量、腰椎などから注射し、血を固めて硬膜の穴をふさぐブラッドパッチ療法が行われます。

費用は病院により異なりますが、目安は1回あたり約30万円(入院費含む)ほどです。

数日から1週間程度の入院が必要になります。1回では十分な効果がなく、時期をあけて2、3回行うこともあります。

山王病院では、この治療を受けた患者約1200人のうち、75%で症状が改善しました。

15歳以下の子どもの患者(約100人)は、さらに治療成績がよく、90%で効果がありました。一方、治療に伴い全身の強い痛みなどが1%弱に起こります。

高い効果が期待できる治療法ですが、高額な費用を支払えず、断念する患者が少なく有りません。

国の研究班は今後、ブラッドパッチ治療の有効性を検証します。

効果が確認されれば、入院費などに保険が使える高度医療に申請し、さらに今後、保険適用される可能性が高まります。

2016年保険適用

今年1月厚生労働相の諮問機関・中央社会保険医療協議会(中医協)は、激しい頭痛やめまいなどを起こす脳脊髄液減少症の「ブラッドパッチ(自家血硬膜外注入)療法」の保険適用を承認しました。(2016年)


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山王病院


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